創造者として
2019年 04月 30日
平成最後の日。
令和の時代はどんな世界になるのでしょう。
新元号は万葉集に由来しているとのことですが、
奈良時代にできた日本最古の和歌集は
天皇から防人、農民にいたるまで
さまざまな身分の人の4500首が集められています。
高貴な人から貧しい人まで一様に詩歌を詠む文化というのは
世界広しといえども、それほど多くはないかもしれません。
心情や日常、何気ない風景や季節を切り取った歌は
特別な地位であるかに関わらず、
どの人のものであってもそれぞれ素晴らしいと思います。
そしてその内容が喜びのものであっても、
かなしみのものであってもそれぞれに心に響きます。
先日NHKで「平成万葉集」という番組をやっていました。
いろいろな人がいろいろな歌を詠んでいて
その情景やその人のストーリーが歌とともに映されていました。
私はそれを台所に立ちながら何気なく聞いていましたが、
ひとつの歌に意識がそちらに向きました。
「ぬけられてこれはトンネルだと知ったおれとあなたに流れ降る春」
一度聞いただけなのに、しっかりと心に届いて
その余韻でいつまでも心があたたかい感じがしました。
これは虫武一俊さんという歌人の一首だと後から知りましたが、
彼の繊細さとそれゆえの生きづらさ、
それでも唯一無二の自分の人生を確かに生きていらっしゃるのでしょう。
それが言葉として紡ぎ出されたとき
やはりそこには一種の美しさを感じるものなのだなと思いました。
そして生きるということは
すでにそれ自体が創造であり、崇高なものなのだとも。
多くの人のたくさんの幸せな歌が
これからも末長く読み継がれていきますことを
新たな時代を迎えるにあたり
心を込めて祈りたいと思っています。
by m_alchemia
| 2019-04-30 06:00
| 日々のこと