内向性とは外向性の否定語ではない

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心理学でよく使われるパーソナリティ測定尺度としてビック・ファイブと呼ばれるものがあります。その中にある外向性について疑問に感じたことがありました。

ビック・ファイブでの外向性とは積極的に行動をし、人に興味があり、集まりが好きで、ポジティブな思考をし、上昇志向が強く、刺激的なものを求める傾向の人を指します。

それに対して内向的な人とはこの外向性の弱い人、つまり消極的で、人にあまり関心がなく、一人でいることが好きで、後ろ向きに考えることが多く、上昇志向や強い刺激を求めることがあまりない人ということです。そして、なおかつ内向的な人は鬱になりやすいというのが一般的な考えになっているようでした。

どう見ても外向的な人はポジティブで、内向的な人はネガティブです。もっとポジティブに生きましょう、というのはもっと外向的な人になりましょうというメッセージを含んでいます。

本当にそうなのだろうか、と。私はどちらかというと内向的な人間だと思っていますし、あまりに騒々しい場所や人が多く行き交ったり集まったりする場所や強い自己主張を求められる場所は好きではありません。けれども私は消極的だとは思っていませんし、人にも関心がありますし、前向きにものも考えますし、向上心もあります。

そんな時に今年出版された「内向的な人こそ強い人」という本に出会いました。ユングが外向性、内向性と名付けた時代には外向性とは関心が外に向かう人、内向性とは関心が内に向かう人という意味であったと書かれています。

ユングの考えを基礎にしているMBTI測定尺度での内向性の定義とは「明快な概念や思考、過去の経験に興味を示す。外部の一時的な出来事やうつろいやすい考えよりも、永続的な概念や経験に信頼を置く。思慮深く、集団から離れて一人静かに思索するのを好み、じっくり考えてから口に出すことを望む」とあり、あらためて内向的という言葉について考える機会を持ちました。

私たちは学校でも職場でも外向的であること、すなわち社交性があったり、どんどんいろいろな所に出かけていったり、たくさんの知り合いをつくったり、初対面で仲良くなったり、ブログやFacebookに頻繁に楽しそうな記事をアップしたり、堂々と皆の前で自分の意見が言えたりすることを求められていますし、どうしたら外向的になれるのかで日々頭を悩まし、うまくできない自分を責めたり、落ち込んだりしている人にもたくさん出会います。

けれども「もっと外向的になりなさい」というメッセージはある種の人たちには良いかもしれませんが、別の種類の人にはとても辛いものかもしれません。自分という存在を否定されている気持ちになる人もいるでしょう。私はどちらの方がすぐれているのかといったことは考えませんが、外向的な人も内向的な人も「ありのままで」いることが許されるようであってほしいと思いますし、特に子どもたちにとって心の平和を乱されない社会であってほしいと願っています。

「内向型人間の時代」の著者であるスーザン・ケインのスピーチもとても興味深いものでした。
 TED スーザン・ケイン「内向的な人が秘めている力」
by m_alchemia | 2014-05-22 19:27 | 日々の想い