初心忘れず

何かの本の中にあった一文が、その後数日どうにも引っかかってしかたがない。

どの本にあったものなのか忘れてしまったので引用ができないのだが、「たとえ壁にぶち当たったとしても、最初に自分が立てた目的を全うすること。初心忘れるべからずである。」というような文章だ。

「初心忘れるべからず」というのは世阿弥の有名な一文なのだが、本当に初志貫徹というような意味なのかなぁ・・・、「どんなに偉くなっても最初のころを思って謙虚さを忘れない」という意味ではないのかなぁ、私はずっとそんな風に思っていたのだ。

それで一応インターネットで調べてみようと思い立った。
すると、なんと 「初心忘るべからず」とは「初心のころの未熟な考えや技をいつまでも捨てない」という意味だとある。(そういう意味もあるということか?)

「 役者の年齢による、その時々のもっとも旬の演技を常に忘れず、芸の種類、幅として保持し、いつでも披露できるようにすること。初心、若年のみずみずしい舞台姿、青年期のはつらつとした芸、中年期の円熟、壮年期の老成した芸。世の能役者、これらすべてを、年齢と芸位の進歩に従って、以前の芸を恥じては捨て、捨てては忘れしてしまうことを世阿弥は戒めている。」

これは「風姿花伝」の書の中のようで、一般に知られている「花鏡」ではなさそうだ。

現代語訳を見るに、初心を忘れないということは自分の演技の幅を持ち続けることの大切さを説いたものだった。若さゆえの芸、未熟であるが故のしぐさを捨ててしまわないこと。

どんなに歳を重ねても、初々しく舞が舞える。あるいは時として老齢の深みをもって舞えるということこそ豊かな舞であるということを世阿弥は言いたかったのだろうか。

初志貫徹ではなかったが、いつも未熟であったころを忘れずに謙虚にという意味でもなかった。何でも気になったものは調べてみるものだ。(^^;)

おかげで世阿弥の言葉では「秘すれば花」も好きな言葉だが、「初心忘れず」もとても心に残る言葉となった。
by m_alchemia | 2009-06-22 16:05 | 日々の想い