イチジクのパンのような人

昼食を食べ損ねて、ベーカリーへ行く。その場所で食べられる小さなコーナーがあって、そこでパンを1つと飲み物を買って席につく。

隣にほぼ同時に席についた50代くらいの女性に声をかけられて話をした。

地方から出てきて、面接を受けたとのこと。

ホテルの仕事で、これから黒のスカートを買わなくちゃいけないの。
何にもない田舎で暮らすのと、何でもあるけれどおいしい食べ物がない都会で暮らすのとどっちがいいかなぁって、考えるの。
都会にはおしゃれな人がたくさんね。すっごいおしゃれな人と、ぜんぜんそうじゃない人が同じように歩いているのがおもしろいなぁって。

でも都会って、ホント、目がチカチカするね。
野菜がおいしくないしね。

母が作っていて、田舎で食べていたたまねぎはお味噌汁にいれると溶けてしまうくらい柔らかだった。たまねぎってそういうもんだと思っていたけれど、こっちで食べたらぜんぜんちがうもんね。

そういう違いを知っているのと、知らないでも生きていかれるということが
本当はどっちが幸せなんだかよく分からなくなってきちゃった。

どこで何を食べてもおいしくない。
だから、いつもソバかウドンか、パン。
でも都会のパンはおいしいね。ほんと、おいしい。田舎には、こういうのないからねぇ。
ほんとどっちが幸せなんだろうね。

ホテルの仕事?やったことないの。
私は物をつくるのが大好き。料理とかも大好きなの。
本当は家政婦さんみたいな仕事ができたら一番いいのにねって思うわ。
でもいまどきのご時世、家政婦さん雇いたい人なんてそうそういないでしょ。(苦笑)

・・・そういって、ご自分が食べていた胡桃といちじく入りのパンを、すっごくおいしいからといって少し分けてくれた。本当においしいパンだった。

ちょっと人恋しくなっちゃって、ゴメンナサイネ。

その人と20分くらいそんな話をしながら一緒にパンを食べた。

スカートを買ったらさっそく仕事が始まるのだと言う。
大変なんだろうな。でもこの人はとてもあたたかい人だった。

何の縁もゆかりもないただの隣人の私を
なんだかとっても暖かく包んでくれる人だった。

知り合いが全くいない場所で、元気もあまりなさそうだったけれども
それでも自分の暖かさを失わないでいられるような、そんな人だった。

この人の幸せを心から祈りたいと思う。
by m_alchemia | 2008-07-11 21:34 | 日々の想い