楽譜を買う

しばらく前に「風の谷のナウシカ」をやっていたのをみて、どうしてもあのテーマ曲が弾いてみたくなった。以来迷いに迷って先日ようやくスタジオジブリ作品のピアノ楽譜集を買った。

楽譜を買っても弾いている時間がとれないだろう。そんなことをしている暇とエネルギーがあるのなら他のことに集中するべきだ。もし買っても弾けないのなら楽譜が無駄になってしまう。売っている楽譜がたくさんあって、どの編曲が自分に最も合っているのか分からない。毎度のことだが、そもそもどうしてそうやってあれこれ手を出そうとするのか。・・・

というのが迷いに迷った理由である。けれど楽譜を買って、最初の8小節を弾いた時、ただそれだけで「ああ、買ってよかった~!」と思った。時間はないし、他にも待っている用事はたくさんあるので果たして9小節目に入れるのはいつになるのか(笑)、最後まで弾けるようになる日は来るのか(!)分からないけれど、音を出しているその時が本当に幸せだったからである。

「ぼのぼの」という漫画の中でぼのぼのがアライグマくんに木登りの方法を教えて欲しいと頼む場面がある。そこでアライグマくんがぼのぼのに言うのだ。

「おまえは木に登りたいわけ?それとも木に登れるようになりたいわけ?」

ぼのぼのは確か「僕はラッコだから木登りが出来るようになりたいわけじゃない。ただ木に登ったらどんな景色がみられるんだろうと思って、だから僕は木に登れるようになりたいんじゃなくて、木に登りたいんだ」というようなことを答えるのだ。

この問いは実は私にとってかなり衝撃的だった。私はそれまでこの2つの違いを意識したことがなかったからだ。私はナウシカの楽譜を追って音を出しながら、このことを思い出していた。

私はこの曲を弾けるようになりたいのではなく、ただ自分が弾いてみたらどんな感じがするのか、それを感じてみたかったのだと思ったのだ。人さまの前で弾けるほどに上達するにはかなりの時間をかけなくてはならないけれど、私がしたいのはそれではない。だから楽譜を買ってよかったなぁと思ったのである。
by m_alchemia | 2006-02-27 20:33 | 日々の想い