徹するということ

最近、経営の神様と言われた松下幸之助さんの本を読み返していた。どうしたら人様のお役に立てるか、この国をもっといい国にしていくことができるのか、本当にそれだけを常に考え続けていた人だったのだなぁと改めて思う。

エピソードを一つだけ。
万博の際に自社が作った松下館に入るために炎天下、松下氏は一般の人と同じように2時間並んだ。75歳の時だそうだ。周囲の人間が気づいて別の入り口から誘導をしようとしたが、松下氏はお客さんがどのような思いをして自分のところに来てくれるのかが知りたいからこのままでいいといったという。そして2時間ならんで建物に入った時に言い渡したことは、もっと楽に入れるように誘導を考えることと、炎天下に立っている人たちのために紙の帽子をつくって全員に配るようにという指示だった。

当然、帽子にはナショナルの文字がはいる。その帽子を来場者が松下館を出てからもずっと被っているので結果的には大きな宣伝になった。それをみて、他社はさすがは松下電器、こんなところでも宣伝をしていると言ったといわれるが、松下氏本人はただ純粋に暑い中を来て下さるお客様のために何ができるのか、徹底的にそれだけしか考えない人だったということだ。

昨年末に放映された松下電器の「石油ファンヒーター」のお詫びCMが好感度ランキングの第2位に入った。これまで三菱や雪印、東京電力などいくつかの企業が自社の欠陥商品などについてお詫び広告を出してきたがそれがランキング10位以内に入ったことはない、とのこと。

今回の松下電器の第2位についてはその理由として「徹底した回数」にあるのではとあった。松下電器は12月の自社の広告枠をすべてお詫び広告にすると発表し、実際にこの1ヶ月で888回のおわびCMを流している。普段TVをつけない私でさえ、1回目にした。何のかざりけもない本当にお詫びだけのシンプルなCMだったと記憶している。他者のお詫びCMが大抵100回ほどなのに比べるとこの回数が格段の差なのだそうだ。

私はちょうど松下氏について書かれている本を読んでいた時だったので、お客様の立場にたって、徹底的に考え抜きそれを具体的な行動にまで落とし込むという精神がここにも表れているのだな、と思った。もちろん欠陥商品はあってはならないものだけれども、それが実際に出てしまった時にはどうすればいいのか。そのあたりの姿勢が他者とは全く違っているのだということを感じ、また消費者もきちんとそれを受けとめているのだと感じた。

今、世の中では企業倫理が大きな問題になっている。仕事をしていく姿勢というものをあらためて考えさせられた。
by m_alchemia | 2006-02-06 22:38 | 日々の想い